2025/11/19 14:06

「免疫力を高めたいけれど、何から始めればいいかわからない」と感じていませんか?実は、私たちの体を守る免疫機能の中心的な存在は「腸」にあります。そのため、腸の健康が体全体の防御力を大きく左右するといっても、過言ではありません。
この記事では、免疫の仕組みから、なぜ腸が免疫力のカギを握るのか、そして今日から実践できる腸活に良い食べ物や食事のコツまで、分かりやすくご紹介します。

免疫力を高めるには腸が関係しているって本当?

私たちの免疫力の要となるのは、他でもない「腸」なのです。なぜ腸がそれほど重要なのでしょうか。ここでは、免疫の基本から、腸に免疫機能が集中している理由まで、わかりやすく解説していきます。

そもそも免疫とは?
免疫とは、私たちの体が細菌やウイルスなどの病原体から身を守るための、防御システムのこと。悪いものが侵入してこないか常に監視し、もし侵入してきたら撃退してくれる、いわば警備隊のようなものです。また、免疫には「自然免疫」と「獲得免疫」の2種類が備わっています。

・自然免疫
自然免疫とは、生まれたときから体に備わっている防御システムです。細菌やウイルスなど、異物が侵入してくるとすぐに攻撃し、排除してくれます。

・獲得免疫
獲得免疫とは、一度体内に侵入した病原体のことを記憶して、次に同じ病原体が侵入してきた際、より強力に攻撃するシステムです。例えば、「はしか」にかかった人が二度かからないのは、この獲得免疫が働いているからです。

これらの免疫細胞が連携し、私たちの体は常に監視と除去を繰り返しているため、私たちは病原体に負けずに元気でいられるのです。

免疫機能の7割が腸に集中
実は免疫機能のうち、およそ7割が腸に集まっているといわれています。これほどまでに免疫機能が集中している理由は、体内でも異物にさらされやすい場所だから。腸は、口から肛門まで続く一本の管であり、体の中にあるとはいえ、その内側は常に外の世界と繋がっています。

私たちが口にする食べ物や飲み物には、栄養だけでなく、細菌、ウイルス、カビ、化学物質など、さまざまな異物が含まれている可能性があります。これらが最初に体内に侵入する主要な経路が腸なのです。そのため、腸に免疫機能が多く集まり、常に私たちの健康を守るための最前線として機能させているのです。

また、小腸に5割、大腸に2割の免疫細胞が住み着いています。小腸には「パイエル板」と呼ばれる、免疫細胞が密集した器官があり、さまざまな異物を効率的に認識し排除する、重要な役割を担っています。

大腸に存在する免疫細胞の割合は小腸と比較すると少なく感じられるかもしれませんが、大腸の免疫機能は全身の健康維持において不可欠な役割を担っています。大腸には非常に多くの腸内細菌が生息しており、これらの腸内細菌と免疫細胞は互いに協力し合うことで、免疫機能を適切に働かせているのです。したがって、腸内環境を良好に保つことは、私たちの免疫力を高める上で極めて重要であると考えられます。

腸内環境を整える方法

腸は免疫機能の要。腸内環境が乱れると、免疫細胞が十分に働けなくなり、結果として免疫力の低下を招く可能性があります。では、腸内環境を整えるためには、具体的にどのような方法があるのでしょうか。

善玉菌・悪玉菌・日和見菌とは?
腸内にはさまざまな種類の細菌が共生しており、その働きによって大きく「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」の3つに分類されます。善玉菌・悪玉菌・日和見菌のベストなバランスは、2:1:7と言われています。これらの菌のバランスが、私たちの健康に大きく影響しています。


主な菌

働き

善玉菌

・乳酸菌

・ビフィズス菌

・酪酸菌

・納豆菌 など

腸内を弱酸性に保ち、健康をサポートする。ビタミンの生成にも関与。

悪玉菌

・ウェルシュ菌

・大腸菌(有毒株)

・ブドウ球菌

・緑膿菌 など

増えすぎると腸内をアルカリ性に傾け、便秘や肌荒れ、免疫力低下など、不調の原因となる。

日和見菌

・バクテロイデス

・大腸菌(無毒株)

・連鎖球菌 など

腸内の優勢な菌の味方となり、善玉菌が多ければ良い働きを、悪玉菌が多ければ悪い働きをする。


善玉菌を増やすには食べ物が重要
日和見菌を味方につけるには、腸内の善玉菌を増やすことが非常に重要です。善玉菌を増やすには、彼らのエサとなる食物を積極的に摂るのが最も効果的です。その代表的なものが「食物繊維」と「オリゴ糖」、そして「発酵食品」です。

・水溶性食物繊維
水に溶けるとゲル状になり、糖の吸収をゆるやかにして血糖値の急上昇を抑えたり、コレステロールの排出を促したりします。そして何より、腸内で善玉菌のエサとなり、腸内環境を整えるのに貢献します。海藻類、果物、大麦などに多く含まれます。

・不溶性食物繊維
水に溶けずに水分を吸収して膨らむのが特徴です。便のかさを増やして腸を刺激し、排便をスムーズにする働きがあります。また、腸内の有害物質を吸着して体外へ排出する手助けもします。穀類、野菜、豆類、きのこ類などに多く含まれます。

・オリゴ糖
オリゴ糖は胃や小腸で吸収されず、大腸まで届くため、善玉菌のエサとなります。

・発酵食品
ヨーグルトや納豆、味噌、漬物といった発酵食品には、乳酸菌やビフィズス菌など、すでに善玉菌が含まれています。これらを日常的に摂取することで、腸内の善玉菌を直接増やすことができます。

善玉菌のエサとなる食物繊維やオリゴ糖は「プレバイオティクス」といい、善玉菌を直接摂れる発酵食品は「プロバイオティクス」といいます。  
プレバイオティクスとプロバイオティクスを組み合わせたものを「**シンバイオティクス**」と呼びます。つまり、どちらかだけを摂るのではなく、2つを組み合わせて摂取することで、より効果的に腸内環境を整えられるのです。

免疫力を高めるなら短鎖脂肪酸にも注目
短鎖脂肪酸とは、私たちの腸内で善玉菌が食物繊維やオリゴ糖などをエサにして作り出す、健康に役立つ成分です。腸内を弱酸性に保つ働きがあり、悪玉菌の増殖を抑えるとともに、腸のぜん動運動を活発にすることで、便秘の改善など腸内環境を整える働きをします。  
また、大腸の細胞のエネルギー源になったり、免疫力を高めたりと、全身の健康維持に重要な役割を果たしていることが、近年の研究で分かってきています。

免疫力を高めるおすすめの食べ物5選

ここからは、免疫力を高めるために役立つ、毎日の食事に取り入れやすい、おすすめの食材をご紹介します。ぜひ、毎日の食卓に取り入れてください。

1. きのこ類【プレバイオティクス】
食物繊維を豊富に含むきのこ類は、プレバイオティクスの代表的な食べ物です。水溶性食物繊維と不溶性食物繊維がバランス良く含まれています。特に不溶性食物繊維が豊富ですが、なめこなど水溶性食物繊維を多く含む種類もあります。  
また、きのこ類に含まれる食物繊維の中に「β-グルカン」が含まれるのも特徴です。β-グルカンは免疫細胞を活性化させる働きがあることが知られています。

<主な食品>
- しめじ  
- まいたけ  
- しいたけ  
- えのきだけ  
- なめこ など  

2. 発酵食品【プロバイオティクス】
発酵食品には、乳酸菌や納豆菌など善玉菌が豊富に含まれており、プロバイオティクスとしての腸内で活躍してくれます。これらの善玉菌、あるいは善玉菌が作り出す短鎖脂肪酸は、腸管免疫を刺激し、私たちの免疫細胞の働きを活性化させます。その結果、体の防御力をサポートし、感染症やアレルギーの予防・改善に繋がることも期待されているのです。  
善玉菌の中には、生きたまま腸に届くものもあれば、途中で死んでしまうものもあります。しかし、死んでしまった菌は他の善玉菌のエサとなるため、結果的に腸内環境を整えるのに貢献してくれるのです。

<主な食品>
- ヨーグルト  
- 納豆  
- キムチ  
- 味噌  
- チーズ など  

3. 果物【プレバイオティクス】
果物には、特に水溶性食物繊維が豊富に含まれています。水溶性食物繊維が便を柔らかくしたり、不溶性食物繊維も適度に含まれることで、便通のリズムが整いやすくなります。結果として腸内に有害物質がとどまる時間を短縮し、腸内環境の健康維持に貢献しているのです。  
また、バナナやリンゴなど一部の果物には、善玉菌のエサとなるオリゴ糖も含まれているのもポイントです。

<主な食品>
- リンゴ  
- バナナ  
- アボカド  
- キウイフルーツ  
- イチゴ など  

4. 野菜類【プレバイオティクス】
野菜には、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維が豊富に含まれており、プレバイオティクスの代表格と言えます。また、野菜には、腸内環境の直接的な改善だけでなく、全身の健康や免疫機能の維持に不可欠なビタミンやミネラル、そして「ファイトケミカル」も含まれていて、健康維持に役立つといわれています。  
ファイトケミカルとは、野菜の色や香り、苦味の元となる成分のこと。抗酸化作用や抗炎症作用を持ち、免疫細胞や腸内細菌に良い影響を与える効果が期待されています。

<主な食品>
- ごぼう  
- オクラ  
- ブロッコリー  
- キャベツ  
- かぼちゃ など  

5. 海藻類【プレバイオティクス】
海藻類の最も大きな特徴は、水溶性食物繊維が非常に豊富であること。わかめや昆布、もずく、めかぶなどに含まれるぬめり成分は、水溶性食物繊維です。  
また、海藻類はミネラルを豊富に含んでいます。これらのミネラルは、腸内環境の直接的な改善だけでなく、全身のさまざまな生理機能に不可欠であり、結果的に免疫システムの正常な働きをサポートしてくれます。

<主な食品>
- わかめ  
- 昆布  
- もずく  
- めかぶ  
- 寒天(天草) など  

免疫力を高める食事のコツ

免疫力を高めるには、先ほど紹介したような食べ物を取り入れるだけでなく、食事の摂り方も少し工夫することで、効果がアップします。

- 3食きちんと食べる  
- バランスのよい食事が大切  
- みそ汁を取り入れる  
- 飲み物も工夫して取り入れる  

免疫力を高めるためには、日々の食事がカギとなります。まず、3食きちんと食べることで腸のリズムが整い、善玉菌に安定したエサが供給されます。この際、バランスのよい食事を心がけ、食物繊維が豊富な野菜やきのこ、海藻類、そして善玉菌そのものを含む発酵食品を積極的に摂りましょう。

特に、毎日の食事に味噌汁を取り入れるのはおすすめです。味噌は善玉菌が豊富な発酵食品であり、具材に野菜やきのこ、海藻をたっぷり加えれば、一度に多くの腸活成分を摂取できます。また、乳酸菌飲料や甘酒といった飲み物も上手に利用することで、手軽に善玉菌やそのエサを補給でき、免疫力アップに繋がります。

免疫力を高める食べ物を活用して健康的な毎日を過ごそう

免疫力を高めるには、免疫機能の要である腸を健康に保つことが不可欠です。そのためには、善玉菌のエサとなる食物繊維やオリゴ糖を多く含む食材を積極的に摂り、さらに発酵食品で善玉菌そのものを補給することが重要です。  
今回ご紹介したような、ちょっとした食事のコツを押さえるだけでも、腸は元気になります。まずは一つ、できることから始めてみてください。

【執筆者プロフィール】
端場 愛

管理栄養士として、中高生から高齢者まで幅広い世代の栄養管理に従事。食べ物と体の関係を分かりやすく伝えるために、栄養食育ライターとして活動中。"今日よりもちょっとだけ健康になれるような情報"を提供するのがモットー。2児の母である経験を活かし、ママやパパの気持ちに寄り添った情報を発信。