2025/11/18 20:27

小学生になると、生活リズムや人間関係の変化から「食べない」理由が複雑になってきます。未就学児とは異なる視点や対応が求められることも少なくありません。本記事では、年齢に応じた対処法や親としての心構えを紹介し、食の悩みに寄り添うヒントをお届けします。

子どもの「食べない」理由と心理

平成27年度 乳幼児栄養調査結果の概要」によると、多くの保護者が子どもの“食べない”行動に悩んでいることがわかります。「偏食」「遊び食べ」「食事の集中力がない」など、その理由や背景はさまざま。子ども自身の発達や心の状態が影響していることもあり、一筋縄ではいかないのが現実です。しかし、同じように悩む家庭は多く、決してあなただけの悩みではありません。

7~12歳(小学生)

●生活習慣の変化
7〜12歳の小学生になると、生活習慣の変化により「食べない」理由が多様化します。学業や習い事による疲れやストレスから、帰宅後に疲労感が強く、食欲がわかないことがあります。また、日によって運動量に差があるため、活動量の多い日は食欲が増す一方、少ない日はごはんが進まない「食欲のムラ」も見られます。  
加えて、朝は睡眠不足や登校準備に追われ、朝食を抜く習慣がついてしまうケースも少なくありません。

●社会性・精神面の変化
小学生になると、身体の成長だけでなく社会性や精神面にも大きな変化が現れ、それが食行動にも影響します。学校での友人関係や集団生活によるストレスを抱えたまま帰宅し、食欲が湧かないこともあります。さらにこの時期になると、外食やコンビニ食品などへの興味が強まり、自分の好みに偏った選択をするようになるのもこの時期です。

さらに、中〜高学年になると体型や見た目を気にして食事量を制限する子も見られ、やせ志向の低年齢化が進んでいることが背景にあります。加えて、幼少期からの偏食がそのまま習慣化してしまうケースもあり、対応には丁寧な観察と理解が求められます。

1~6歳頃(未就学児)

●身体的・発達的要因
1〜6歳ごろの子どもが食事を「食べない」理由には、身体的・発達的な要因が大きく関わっています。まず、幼児期は見慣れない食材に対して警戒心を持ちやすく、「初めてのものを避ける」という反応はこの時期特有のものです。また、「自分で決めたい」という自己主張が強くなり、あえて食事を拒否することもあります。さらに、味覚の発達により苦味や酸味に敏感になり、それまで食べられていたものが急に苦手になることも珍しくありません。

この時期は、好き嫌いがはっきりしやすく、それが進むと偏食の傾向が習慣化することもあります。加えて、活動量やおやつの摂り方によってお腹の空き具合が変わり、食事量にムラが出るのも自然なことです。こうした成長過程に伴う食行動の変化を理解し、無理に食べさせずに見守ることが大切です。

今日から試せる具体的な対処法と工夫

子どもが食事を食べないとき、すぐに叱るのではなく、日々の工夫で少しずつ改善が期待できます。ここでは、今日から家庭で実践できる具体的な対処法をご紹介します。

7~12歳(小学生)

●生活リズムの調整
小学生が食事を食べにくいと感じるときは、まず生活リズムを整えることが効果的です。毎日決まった時間に食事をとることで、自然とお腹がすくリズムが身につきます。また、十分な睡眠は疲労回復だけでなく、食欲の安定にもつながります。さらに、適度な運動を取り入れることで空腹感が得られ、食事への意欲も高まります。

●食事内容・環境の工夫
内容や環境を見直す工夫も小学生には効果があります。まず、子どもと対話し「何がイヤか」「何が食べたいか」を聞いてみましょう。そのうえで、一緒に献立を考えたり調理に参加させたりすると、食材への関心が高まり、食べる意欲も育ちます。

また、自分で盛り付けをさせたり、カフェ風にアレンジしたりすると、食事が楽しい時間になります。忙しい日でも、食べやすい具だくさんスープや丼物など、手軽で栄養バランスのよいメニューを取り入れることで食べることができるようになっていきます。

●心理的なサポート
食事を食べにくいと感じる背景には、心理的な要因も関係していることがあります。まずは学校での様子を気にかけ、ストレスや悩みがないかを丁寧に聞く時間を作ることが大切です。また、完食だけでなく「一口でも食べようとした」努力を具体的に褒めることで、自己肯定感が育ち、食への前向きな気持ちが生まれます。

さらに、家族で食卓を囲み、会話を楽しむことで、食事が安心できる楽しい時間へと変わっていきます。

1~6歳頃(未就学児)

●1〜2歳児
1〜2歳の子どもが食事を食べないときは、特に発達段階に合った工夫が大切になってきます。まず、この時期は手づかみ食べが主体であり、無理にスプーンやフォークを使わせる必要はありません。手づかみを通じて自然と食具の使い方も身についていきます。また、食べやすいように細かく刻んだり、柔らかく煮たり、一口サイズにしたりと、子どもに合った形態で準備しましょう。

「おいしいね!」と声をかけながら一緒に食べるのもよいですね。そして、集中力が続く短時間で食事を終えるようにすると、食べることが嫌になりにくくなります。1回の食事時間の目安は15分から30分程度だととらえておきましょう。

●3歳児以降
3歳くらいになると、周囲の人とのかかわりを持ち始めたり、意識をしたり影響を受けたりするようになります。そして「自分もやってみたい」という気持ちが芽生えるようになるのもこの時期で、豊かな感情表現をするようになります。

3〜6歳のお子さんが食事を嫌がる場合は、選択肢を与える、見た目を工夫する、準備や片付けを手伝ってもらう、献立のリクエストを聞く、理由に耳を傾けるといった方法が有効です。「ピーマンとニンジン、どっちから食べる?」のように自分で選ぶ機会を与えたり、キャラクターの形にする、彩り豊かにするなど見た目を楽しくすると食が進むことがあります。

一緒に料理をすることで食材への興味を引き出し、「今日のご飯は美味しいね」と肯定的な声かけで自信を育みましょう。食べたいものを聞いて献立に取り入れると、食べる意欲を高められます。また、なぜ食べたくないのか理由をしっかり聞き、それに合わせて対応を考えることも大切です。

年齢問わず実践!子どもが「食べない」時のお助けヒント

そうはいっても、お子さんが食べてくれないと、つい悩んでしまいますよね。「どうして食べてくれないの?」と途方に暮れる前に、ほんの少しの工夫で食卓が笑顔に変わるヒントを試してみましょう。今日から実践できる、年齢問わず役立つお助けヒントをご紹介します。

基本的な食事環境を整える
まずは食事に集中できるよう、環境を整えることが大切です。テレビを消し、スマートフォンは見えないところに片付けるなど、気が散るものを排除して食事の時間を意識させましょう。  

特に幼児の場合、食器や食具が使いにくい、椅子の高さが合っていないといったことが食べる意欲をなくす原因になることも。お子さんの体格に合った食器や椅子を選ぶことで、自分で食べる楽しさをサポートできます。集中できる環境と使いやすい道具を準備して、快適な食事の時間を作ってあげましょう。

無理強いはNG
食事の工夫を凝らしても、なかなか食べてくれないと、親としてはイライラしてしまうこともありますよね。しかし、そこで無理に食べさせるのは避けましょう。食べることを嫌いになってしまったり、食事の時間が苦痛になったりする可能性もあるからです。  

また、兄弟や友達と比較するのもNG。「〇〇ちゃんは全部食べたのに」といった声かけは、お子さんの自己肯定感を下げ、さらに食への抵抗感を強めてしまうことにも繋がりかねません。個人のペースを尊重し、焦らず見守ることが大切です。

おやつの量やタイミングを見直す
お子さんが食事を食べない原因の一つに、おやつの量やタイミングが関係していることがあります。食事の時間に空腹感がないと、当然食は進みません。  

農林水産省の「食事バランスガイド」によると、幼児のおやつはあくまで「補食」であり、1~2歳で100~150kcal(おにぎり小1個+オレンジ1/4切れ)、3~5歳で150~250kcal(フライドポテト80g+牛乳200ml)が目安とされています。小学生以降は200kcal程度が適量です。  

習い事や塾の前後でおやつを食べる場合も、食事に響かない程度の量に抑えることが大切です。おやつの見直しは、食事への意欲を引き出す第一歩となるでしょう。

褒めるポイントを見つける
食事に抵抗がある場合、いきなり完食を目指すのはやめましょう。まずは「一口から」とスモールステップで取り組むことが重要です。一口でも食べられたらたくさん褒めてあげてください。小さな器に盛りつけると視覚的にも「これなら食べれそう」と感じることも多いですよ。  

「一口食べられたね、すごい!」「〇〇を食べてくれて嬉しいな」など、具体的に褒めポイントを見つけて伝えることで、お子さんは「食べると嬉しいんだ」と感じ、次への意欲に繋がります。焦らず、少しずつ成功体験を積み重ねていくことが、お子さんの「食べたい」気持ちを育む鍵となります。

市販品や冷凍食品も活用する
毎日子どものために食事を工夫し続けるのは、本当に大変なことです。せっかく頑張って作ったのに食べてくれないと、親の心も折れてしまいますよね。そんな時は、無理せず市販品や冷凍食品を上手に活用するのも一つの手です。  

これらを活用することで、親の負担を減らしつつ、子どもが「これなら食べられるかも!」というものを見つけやすくなります。例えば、特定の野菜が入った冷凍食品や、味が気に入る市販の惣菜など、食べられる選択肢を広げるきっかけにもなります。完璧を目指さず、親子で気楽に食事できる方法を見つけていきましょう。

こんな時は専門家へ相談を!年齢に関わらず注意すべきサイン

お子さんの「食べない」状況が続くと、保護者の方の不安は尽きないことでしょう。以下のようなサインが見られる場合は、一人で抱え込まず、専門家への相談を検討することが重要です。

- 体重が急激に減少する:栄養状態の悪化が疑われます。  
- 元気がない、ぐったりしている:体調や栄養の問題が心配されます。  
- 極端な偏食が長期間続く:特定の食品しか食べない状態が改善しない場合。  
- 特定の食品への強い拒否反応がある:食べ物に対する強い嫌悪感や恐怖心を抱いている場合。  
- 保護者が精神的に追い詰められている:お子さんの食事問題が、保護者自身の大きなストレスになっている場合。  

これらのサインが見られる場合は、小児科医や管理栄養士など、専門家への相談が必要です。特に小学生以上のお子さんの場合、長期にわたる食事量のセーブは摂食障害(拒食症など)につながる可能性も否定できません。  
お子さんがご飯を食べない問題は、数日で解決するものではないことも多く、親が一人で抱え込みすぎないことも大切です。無理せずプロに頼ることで、解決のヒントが見つかるかもしれません。

焦らず、子どもの成長を信じて見守ろう

お子さんが食事をなかなか食べてくれないと、心配でたまらないですよね。でも、多くの場合、この「食べない」時期は一時的なものであり、お子さんの成長とともに自然と変化していくことが多いです。

なんでも完璧にしようとせずに、「何か食べられたらそれでOK」というくらいの、おおらかな気持ちでいることも大切です。すべてを親が抱え込み、ストレスを溜め込んでしまうと、お子さんとの食事の時間がかえって辛いものになってしまいます。  
親自身の心と体の健康を守ることも、お子さんを見守る上で非常に重要です。どうぞご自身を労わりながら、この時期を乗り越えていきましょう。

【執筆者プロフィール】
もり ひろこ

栄養士・管理栄養士歴20年、特別養護老人ホーム、保育所給食、行政栄養士など幅広く経験しております。また、実際に調理現場にも長く立っておりました。多職種の方々と一緒に働いた経験をいかして活動中です。